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これまでの経緯

学校規模適正化計画

全国的に少子高齢化が進むなかで、各地の学校では児童数の減少が続いています。そもそも少人数教育には、教師と子どもの距離が近く、きめ細かな対応が可能になるというメリットがありますが、児童数が少なくてクラス替えができないと人間関係が固定化し、「切磋琢磨」する環境、つまりクラス間の対抗意識が芽生えないのでよくないと文部科学省は主張し、「適正規模」(小学校では1学年2学級を確保できる児童数)を確保するための学校の統廃合を地方自治体に求めています。
奈良市では平成19年に学校規模適正化の基本方針が取りまとめられ、これまで「前期計画」(平成20年~)、「中期計画」(平成23年~)、「後期計画」(平成28年~)という段階を踏んで、1学年1学級を編成するのが難しい過小規模校の統廃合が進められてきました。

奈良市教育委員会:学校規模適正化について

平城ニュータウンの平城西中学校区にある右京小学校と神功小学校は、児童数の減少が続いていましたが、1学年1学級以上が確保できている小規模校であり、「中期計画」の段階では統廃合の対象とはなっていませんでした。ところが、平成28年に発表された「後期計画」で、平城西中学校区の学校を統合再編する方針が打ち出されました。過小規模ではない学校を統廃合する、奈良市としては初めてのケースとなります。

学校の統廃合は難しい問題です。特に、歴史の浅いニュータウンのような土地柄では、小学校を単位としてまちができ、小学校が地域コミュニティの核として機能し、地域の人たちの心のよりどころとなっている場合が多いため、なおさらです。
学校規模適正化を地方自治体に求めている文科省も、平成27年に公開したガイドラインで、「地域コミュニティの核としての性格を有する小・中学校の統合の適否の判断は、行政が一方的に進めるものではなく」「保護者や地域住民と丁寧な対話を通じて合意形成を図りつつ、地域の実態を踏まえた方針や基準を定め、具体的な検討を進めていく」よう求めています。

文部科学省:公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の策定について(通知)

挫折した「地域の合意」形成

奈良市は平城西中学校区の学校規模適正化にあたり、平城西中学校の敷地内に新しい小学校の校舎を建設し、「施設一体型の小中一貫校」を開校する計画を立てました。市は当初、右京地区と神功地区の自治連合会を通じ、地域との合意を図ろうとしたようです。しかし、二つの地区が統廃合計画に対してまったく違う反応を示したことから、合意形成のプロセスは挫折します。

二つの地区のうち、平城西中学校がある神功地区では、統廃合計画を歓迎するムードがあります。地区内に新しい学校ができるなら地区住民として失うものはなく、校舎の老朽化で雨漏りがひどい神功小学校の施設面の問題が当面解決されるからです。また現在、神功小学校の周辺では空き地が目立ちますが、「新築の小学校ができれば地価が上がる」との期待感もあります。一方、小学校を失うことになる右京地区では、反対の声が多数派です。

神功地区自治連合会が平成27年に実施したアンケートでは、統廃合に「賛成」259通(48%)、「反対」52通(10%)、「どちらともいえない」229通(42%)という結果が出ました。「賛成」と「どちらともいえない」が拮抗していますが、明確に反対の意思を示した人は少数です。
これに対して右京地区自治連合会が平成28年に実施したアンケートでは、統廃合に「賛成」123通(21%)、「反対」314通(55%)、「どちらともいえない」138通(24%)という結果が出ます。

神功アンケート結果 右京アンケート結果

ただし、(ある意味で当然ながら)右京地区で「賛成」と答えた人の中には右京小学校への統合を望む人が多く、新しい小学校が神功地区にできることに賛成する回答は、わずか4%でした。つまり、神功地区に位置する平城西中学校の敷地に新しい学校を建てるという市の案は、右京地区では賛同を得られなかったのです。

奈良市はこれ以降、統廃合計画に住民を参画させることを断念し、教育委員会が独自に作成した案に対する「理解」を事後的に地域に対して求めるという方向に舵を切ります。右京地区の危機感は強まり、平成29年には保護者と自治連合会から市議会に対して右京小学校の存続を求める請願が三本出されました。

右京ママの会請願Ⅰ(40名)
右京ママの会請願Ⅱ(61名)
右京地区自治連合会請願(1784名)

これに対し、神功地区からは統廃合の早期実現を求める請願が出されました。

神功地区自治連合会請願(2名)

平成30年1月、奈良市は平城西中学校敷地での「施設一体型の小中一貫校」建設案の説明会を保護者や住民に対して行いました。しかし、「地域住民に説明した」というアリバイづくりに利用されるのを警戒した右京地区自治連合会は説明会の開催に応じず、説明会は右京地区の住民を対象外として開催されました。
質疑応答では「施設一体型の小中一貫校」のメリットを疑問視する声や、強い反対意見も出されましたが、市が公開している報告書では、「様々な意見をいただきました」とごく簡潔にまとめられています。これでは、地域の合意が不在であることを隠す情報操作だと言われても仕方ありません。

奈良市教育委員会:平城西中学校区の学校規模適正化説明会を開催しました
2018年1月26日(説明会@平城西中学校)

地域の分断

そして平成30年11月、奈良市議会(観光文教委員会)において、平城西中学校区の平城西中学校・神功小学校・右京小学校を統廃合し、「施設一体型の小中一貫校」を今の平城西中学校の敷地内に建設し、平成33年4月に開校させる計画が発表されました。この平成33年開校というスケジュールの策定にも、住民が参画することは一切ありませんでした。
計画の発表後の平成30年12月、市はにわかに平城西中学校・神功小学校・右京小学校の保護者や神功地区・右京地区の住民、未就学児の保護者などを対象にした説明会や意見交換会を活発に開催しはじめます。ただ、その内容はあいかわらず、あくまで市の側が一方的に作成した計画を受け入れるよう、地域の側に「理解」を求めるものでした。

奈良市教育委員会:平成30年度平城西中学校区の学校規模適正化について
2018年12月8日/19日(説明会@右京小学校)
2018年12月26日(意見交換会@右京ふれあい会館)

このような一方的な統廃合計画の進め方は、先に触れた文科省の「手引」に反しています。このガイドラインでは、地域の合意を形成するための具体的な進め方としては、統廃合の可否を判断する検討委員会を立ち上げる際、

  • 地域や保護者の代表に検討委員会の委員として参画してもらう
  • 検討前や検討の途中で保護者や地域住民のニーズや意見を聴取するためにアンケートや公聴会、パブリックコメント等を行う
  • アンケートを行うに当たっては、学齢の児童生徒の保護者のみならず、就学前児童の保護者や子育てを予定している世帯の意向も適切に把握する
  • 広報誌やタウン誌等で検討委員会における検討状況をきめ細かく情報提供する
ことが推奨され、こうした工夫は「統合後の学校に対して保護者や地域住民から積極的なサポートを得る観点からも極めて重要」なものと位置づけられているのです。

行政の側が一方的に学校統廃合を進めた結果、今の平城西中学校区においては、行政に対する怒りと不信感が渦巻いています。相反する請願が出されるなかで両地区の自治連合会の関係はますます悪化し、今では対話のテーブルにもつけない状態です。平成30年8月には統廃合の推進派の人たちが「平城西中学校区の魅力ある教育を考える会」を立ち上げ、市が計画している新しい学校の魅力を発信し、平成33年4月の開校を既成事実として印象づけるビラを両地区に全戸配布するなどの活動を行っています。会のブログには一部、右京地区の人たちへの攻撃的な文言が並び、地域の分断の根深さを感じさせます。

「平城西中学校区の魅力ある教育を考える会」

こうした活動に対し、右京地区では「神功と右京のあいだに38度線ができたようだ」「雨漏りで神功の子どもが苦しんでいるのが右京のせいにされていて悲しい」「統廃合に賛成しなければ平城西校区に居場所がなくなるぞ、と脅されているように感じる」との声が上がっています。

このように、統廃合に賛成する住民と反対する住民のあいだの軋轢は日を追うごとに深刻化し、「統合後の学校に対して保護者や地域住民から積極的なサポートを得る」ことは到底望めない事態となっています。にもかかわらず、行政の側は地域の分断を放置したまま、「子どもたちによりよい教育環境を与えるためには少しでも早く学校規模適正化を進める必要がある」との名目で、当初のスケジュールに固執しています。
引き続き保護者・住民に対する説明会は開催されていますが、地域の合意がない段階にもかかわらず計画の既成事実化を進めようとする市の姿勢には、不信感が募るばかりです。保護者・住民がときに声を荒げ、ときに涙を流しながら計画の見直しを訴えても、市の側は「施設一体型の小中一貫校を平成33年4月に開校する」というスケジュールへの異論については一切聞く耳を持たないという態度を貫いています。

現状で「地域の合意がない」こと自体は市の側も説明会の場で認めていますが、合意の有無にかかわらず、平成31年3月に新校舎の設計予算を市議会に提出するという強硬姿勢を崩しませんでした。

右京小PTAを排除して進む計画

新校舎の設計予算が提出される直前の平成31年2月28日、市議会(観光文教委員会)で請願審査が行われ、右京地区から出されていた請願は二本とも賛成3人・反対4人で不採択となりました。なお、神功地区から出されていた請願は取り下げられました。3月20日の市議会(本会議)でも、右京地区の請願は二本とも賛成13人・反対24人で不採択となり、新校舎の設計予算は承認されました。
このときの請願審査の場では、請願者の「右京ママの会」と右京地区自治連合会の代表が意見陳述を行いました。従来、市民が発言する制度は奈良市議会にはなかったため、議事のあいだに「休憩時間」を取り、そこで意見陳述するという特例措置が講じられました。議事録にも残さない形でしたが、奈良市の強引な手法を問題視する市民の訴えは奈良新聞に取り上げられ、地域の分断を招いた「行政が背負う責任は重い」と指摘がなされました。

しかし、設計予算が市議会を通過して以降、住民や保護者の声に対する市の教育委員会の反応はきわめて鈍くなります。先の説明会で寄せられた疑問に対する満足な回答もなされないままでした。右京小学校PTAは、市の説明に「納得できていない」保護者が70%以上、設計予算の執行についても「反対」の保護者が60%以上であることを受けて、5月30日に新たな請願を市議会に提出しました。①奈良市計画に関する説明会で出た疑問・質問への回答(子供たちの教育面)、②右京小学校地区の避難計画(子供たちの安心・安全)、③右京小学校の跡地計画(子供たちの住環境面)を書面で求め、明確な回答があるまでは学校統廃合について奈良市との協議に応じない、協議が完了しないかぎり新しい学校の設計にまつわる予算執行は断じて認められないという立場を明らかにしたのです。

右京小学校PTA請願

これに対して奈良市は、「地域の合意」がなくともスケジュールに沿って計画を進めるという態度で応じます。令和元年7月には入札が行われ、共同設計が6600万円(税別)で落札しました。市の教育委員会は、神功地区では神功小学校PTAや神功地区自治連合会の代表が参加する協議会を立ち上げ、新しい学校づくりに向けた話し合いを進める一方、右京地区に対しては対話はおろか、最低限の説明すら放棄しました。きわめつきに、市議会に請願を出している右京小学校PTAを話し合いの相手とはしないと宣言したのです。二つの学校を統廃合する際、教育委員会が片方の学校のPTAだけを締め出して新しい学校づくりをするというのは、前代未聞です。

その後、7月29日と8月20日に奈良市議会(観光文教委員会/総務委員会)で右京小学校PTAの請願審査が行われ、なお慎重な審査を要する案件として審査継続が決まりますが、11月13日の観光文教委員会では早々と請願の不採択が決議されました。当事者の合意がないまま強引に学校統廃合を進める奈良市の姿勢を市議会が無批判に追認した格好です。

※この件については続報が入り次第情報を更新します。

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私たちは市が進める一方的な統廃合計画に反対し、地域の保護者や住民が行政と対話しながら地域の学校のあり方を考えていくプロセスを提案します。

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