教育上の問題点
- 右京小学校がなくなると…?
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問題その1。少人数教育の魅力が失われる。少人数教育には、教師の目が生徒に届きやすく、きめ細かな教育が可能で、生徒同士も仲がよくなりやすいという特徴があります。たしかに、「クラス替えができる規模の人数を確保してほしい」との声もありますが、右京小学校では縦割り活動が活発で、地域の人々とのふれあいも充実しており、1学年1学級ゆえの「外」に触れる経験の不足を補っていました。その観点では理想的な教育環境が実現していると言えます(その点は、市の教育委員会も市議会への答弁などで公に認めています)。その場を「大人の事情」で壊すことになれば、子どもたちの心に深い傷を残すでしょう。
問題その2。右京地区で暮らす多くの子どもにとって通学時間が長くなり、負担が増える。これまでは徒歩10分程度の距離だったのが、最大で徒歩30~40分に。しかも交通量の多い道路を(場合によっては複数)横切らなければならなくなり、中には信号機がない道路もあります。夏の暑い時期には熱中症も心配です。子どもが不審者に声をかけられるのではという不安も増えます。
問題その3。学童保育(バンビーホーム)が利用しづらくなる。右京小学校は駅に近いため、電車通勤をしている親がすみやかに子どもを迎えにくることができます。その利便性のために右京地区に暮らしている子育て家庭は多いのです。そういった家庭にとっては、駅から遠い今の平城西中学校の敷地に小学校が移れば、子どもと過ごせる時間が大幅に減ります。最悪、生活の基盤が破壊されることになります。


- 既存の施設の老朽化への対応
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なお、奈良市内の学校の耐震化工事が99%近く完了している状況下で、右京小学校の校舎は耐震化工事が済んでいない唯一の小学校でした。その理由について、市は、「新たな施設一体化を中心とした小中一貫校を設置する案で検討を進めているところ」だからと平成29年5月の市議会(観光文教委員会)で答弁しています。まだ決定すらしていない統廃合計画があるからといって耐震化を先延ばしにしてきたというのは、許されない失政です。もしも、統廃合計画が実現して新しい学校が開校するまでの期間に大きな地震が起こったら、どうなるでしょう。子どもの生命が危険にさらされます。市の行政に携わる人たちは、そのことを想像できないのでしょうか。
平成30年6月の大阪北部地震の後、市は校舎の部分的な耐震化に着手しましたが、今の校舎がなかなか耐震化されないことへの不安から統廃合計画への賛成に傾いた保護者がいるとしたら、市は子どもの命を人質に取って統廃合計画への賛同を強要したことになります。また、神功小学校では雨漏りが深刻になっています。学校生活に支障が出るだけでなく、子どもの健康面にも影響が出る心配があります。このため神功地区では新校舎の建設が強く待望されており、多くの人が統廃合計画に賛成する理由になっています。
平城西中学校区の魅力ある教育環境を考える会:神功小学校の雨漏りの状況
平城西中学校区の学校は、いずれも建設から長い年月が経過しており、施設の老朽化が進んでいるのは事実です。近い将来に補修や建て直しが必要になります。その際、学校が統廃合されて数が減っていれば、大幅なコストカットになるのは間違いありません。その点が、行政の側が学校の統廃合を急ぐ大きな理由でしょう(ただし市は、住民に対する説明会では、統廃合の理由は「けっして予算カットではない」と強調しています)。
しかし当然ながら、統廃合だけが学校施設老朽化問題の唯一の解決策ではありません。文部科学省は平成27年4月、「学校施設の長寿命化計画策定に係る手引」を公表し、老朽化した施設を改修して「長寿命化」しながら長く使っていく方針を示しました。平成29年3月には、この手引きの解説書を公表し、その中で、少子化の進行で学級規模が縮小した分、代わりに公共的な性格のあるNPOなどを入居させる取り組みを先進的な事例として紹介しています。今ある学校を安易に統廃合してしまうよりも、既存の施設を改修して長寿命化しつつ、空いている教室をたとえば
- フリースクールや放課後教室
- こども食堂
- 図書館・博物館
- 遊び場、公園
- 生涯学習施設や文化・スポーツ交流施設
- 関西学研都市で働く若手研究者や若手起業家のためのシェアオフィス
少なくとも、市が現在計画している「施設一体型の小中一貫校」を新たに建設した場合にかかるコストを試算し、既存の施設を長寿命化しつつ空き教室を有効活用した場合にかかるコストと比較するという手続きは必須でしょう。長寿命化計画は国が推進している方向でもあるからです。
- 「施設一体型の小中一貫校」とは?
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そもそも小中一貫教育とは何でしょうか。小学校の6年間と中学校の3年間に連続性を持たせるという制度です。「一貫教育」とはいえ、小学校と中学校のカリキュラムはあくまで別物ですが、特別な資格を取った教師は、小学校と中学校の両方で教えることができます。
この制度の特徴は、教育学的にメリットが実証されてはいないにもかかわらず、近年、にわかに文部科学省によって強く推進されているという点です。実質的に各地で学校統廃合を進めるための口実(後づけの理由)なのではないか、という疑惑を払拭できていないのが現状です。『「小中一貫」で学校が消える 子どもの発達が危ない』(新日本出版社、2016年)
小中一貫校のメリットとされるものは何でしょうか。小中一貫校のうち、「施設一体型」と呼ばれるタイプでは、児童・生徒は同じ敷地内の同じ施設で9年間を過ごすことになります(ちなみに、このタイプの学校を新たに開校するために校舎の新築が必要になった場合、文科省から助成金が下ります)。そのため、「中1ギャップ」と呼ばれる状態に陥りにくいとされます。ただし、そこに明確なメリットが存在するという教育学的なエビデンス(証拠)はありません。国立教育政策研究所の「『中一ギャップ』の真実」には、そもそも「中1ギャップ」に科学的根拠がないことが明記されています。
それに対して、施設一体型の小中一貫校のデメリットは、ある程度明らかです。まず、教師の負担が大幅に増えるのは確実です。身体的にも心理的にも発達段階が大きく異なる小学1年生から中学3年生までの子どもたちを同じ「箱」に詰め込むと、さまざまな困難が生じます。
- 小学校と中学校は授業時間が違うため、時程を合わせるのに苦労する。チャイムを鳴らせない場合も
- 図書館が小中共有のため、小学生がいると中学生は勉強できない
- 中学生の試験期間中は小学生がグラウンドで遊べない、騒げない
- プールの更衣時間と場所の確保が難しい
- 小学校高学年の児童において年長者としてのリーダーの自覚や責任感が芽生えにくく、自己肯定感が低い









